「自律分散型の水・エネルギー」「新インフラ時代」ーInterAqua2026セミナー開催レポート

第一部の様子(登壇メンバー写真左から村上氏、斎藤氏、桑原、武田)写真提供:InterAqua2026事務局

1月28~30日に東京ビッグサイトで開催されたInterAqua2026(第17回水ソリューション総合展)のオープニングイベントとして、「シリーズ~人口減少時代を生きる」と題したセミナーを行ないました(開催概要は当ページ末尾をご覧ください)。

当機構は、2024年3月、国において水道行政の所管が厚生労働省から国土交通省と環境省に移管される際に「自立した持続可能な水道事業に向けての提言書~50年後の持続可能な水循環日本を目指し、今日から歩む~」(以下、提言2024)を発表しています。InterAquaでは、提言2024の検討段階に当たる2024年1月から、提言内容を踏まえたセミナーシリーズを開催しており、今回が3回目の開催となりました。提言2024で示した課題やキーワードに関するスピーカーを招き、時代に即した切り口から意見を交わすことで関係者の気づきと実践を促すことを狙いとしています。

今回のセミナーでは「自律分散型」と「担い手」のキーワードを切り口に、2つのセッションを行ないました。

【第一部】自律分散型の水・エネルギー
第一部では、中小水力事業の拡大に向けて、施設整備だけでなく、コミュニティ啓発などソフト面でも多様な展開を図る明電舎の事例を紹介いただきながら、「自律分散」の価値について意見を交わしました。

提言2024では、小水力発電の活用、給水施設の分散化の必要性を示していますが、従来の集約型インフラシステムと科学技術の進展によって利用価値が高まりつつある自律分散型インフラの特性を生かしたインフラシステムと流域社会、地域社会の形成は、地域の持続可能性を高めていく上で不可欠な切り口となっています。
そこでディスカッションのベースとして、村上教授が関わった政策研究「水みんフラー水を軸とした社会共通基盤の新戦略-」や論文などを一例に、分散型インフラへの注目が高まる背景、集中型と分散型の「インフラ選択」を取り巻く環境変化等について提起いただきました。
明電舎の技術は、3Dプリンティング技術を活用し、設置水路に最適な小水力発電の水車部品の製造効率を高めることで、柔軟かつ簡便に小水力発電設備を設置できることがポイントとなります。一方、こうした技術革新が進みながらも、利水を取り巻く制約や地域社会の合意、インフラを支えるコミュニティの存在無しには、普及は広がっていかないことも課題です。また、インフラ整備が成熟する日本においては、集中型インフラの効率性に対して地域分散型の価値が相対的に評価されづらい傾向があることも否定できません。
日本水フォーラムからは、水利用とエネルギーの不可分性のもとで、開発途上国で展開する草の根支援の支援や、水・エネルギーインフラが途絶した国内の災害被災地の素朴な気づきに関する市民と若者の視点を紹介いただきました。

人口減少社会における地域・集落の持続には、水とエネルギーが欠かせない要素です。水とエネルギーを保有し、維持していくこととその先にある営みそのものが、地域・集落の存在価値として成り立つ側面もあります。大気造水技術や個別分散の水循環システムの開発など、水利用に関する技術革新も進んできました。今後、水とエネルギーを有することが地域の価値としてより一層高まっていくことが予想される中で、第一部では、「自律分散型」の価値と普及に向けたアプローチについて議論を深めることができました。

第二部登壇メンバー(写真左から、村上氏、関氏、武田)写真提供:InterAqua2026事務局

【第二部】新インフラ時代
第二部では、「担い手」という視点に重きを置いて、インフラと地域社会のあり方について、議論しました。

提言2024では、人口減少社会とともに減りゆく水インフラの担い手に関する課題解決策にも言及しています。広域運営や官民連携だけでなく水利用者との協働などを提起していますが、インフラ運営の現場が担い手不足への実感が強まる中で、さまざまな具体的な工夫やビジネススキームが展開されるようになってきました。
スピーカーとして登壇いただいた中部電力ミライズは、昨年10月に持続的な地域社会の発展を目指す包括連携協定を長野県と締結しました。協定の目的として、地域の活性化、再生可能エネルギーを活用したエネルギーサービス、地域交通、水道、資源循環などの社会インフラに関するノウハウの活用などを通じたサスティナブルな社会の創造を上げていますが、社会インフラの領域を越えた連携のシナジー創出が期待される展開です。そこで第二部では、地域に必要な「インフラ」を幅広くとらえ、あらゆる社会課題に共通する担い手の課題の解決策について議論しました。

政府においても「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)を政策として提唱しており、インフラの計画・整備・管理までを一体で捉えたプレイヤー間の連携、インフラ領域を越えた共通業務の効率化・高度化、広域連携を推進することで、社会課題であるインフラの維持、地域の担い手の維持、地域社会の維持を図っていこうという取り組みが加速しようとしています。そこで最後に第二部の登壇者から、インフラの維持・発展に向けたキーワードをフリップに書いて発表しました。関部長は「支えあい」、村上教授は「日本大貧乏時代?減る人、減らない仕組み」とのキーワードを挙げました。

気候変動の影響で、水資源の賦存量に大きな変化こそあれども、地球上に存在する水資源量は変わりません。日本の人口は減っていきますが、担い手のあり方を問い直すことによる工夫の余地はありそうです。一方、現状として地域単独での自立が困難であろうエネルギー問題を水を取り巻く問題と一体で捉えることは、地域の持続という社会課題の解決に有効なアプローチになるのではないでしょうか。その意味でも提言2024は、変化し続ける社会の中でもぶれずに進むことが求められる水を基軸とした持続可能な社会の指針となるものと確信しています。今後の企画にも是非ご期待ください。

開催概要 InterAqua2026主催者セミナー「シリーズ~人口減少時代を生きる」

2026年1月28日(水) 10:30-12:00、Aqua Stage(東京ビッグサイト南1ホール)
【第一部・二部共通】
コメンテーター:大阪大学教授 感染症総合教育研究拠点 教授 博士(工学)村上道夫氏
モデレーター:一般社団法人 水の安全保障戦略機構 特任研究員 武田教秀

10:30~【第一部】自律分散型の水・エネルギー
スピーカー:株式会社明電舎 研究開発本部3D造形事業推進室 室長 斎藤啓氏
スピーカー:特定非営利活動法人日本水フォーラム チーフ・マネージャー 桑原清子

11:15~【第二部】新インフラ時代
スピーカー:中部電力ミライズ株式会社 サステナブル社会推進本部 地域ビジネス部 部長 関隆宏氏

次回のInterAqua開催予定は、2026年12月16日(水)~18(金)です。引き続き同様のセミナーを予定していますのでご期待ください。出展募集もすでに開始されています。

(水の安全保障戦略機構 特任研究員 武田教秀)